プロンプトが書けないのは、問いがまだ無いからです――学校でAIを教えることになったら

研究スキル情報

中央教育審議会の特別部会が、次期学習指導要領の審議まとめ案を示しました。報じられているところでは、教育へのAI活用が初めて明記され、小中学校の教科に「情報」が置かれる方向です。まだ案の段階で、告示は2027年初頭、小学校での全面実施は2030年度からと見込まれています。

制度の解説は、これから各所から出るはずです。ここでは別のことを書きます。実際に高校生や大学生にAIの使い方を教えてみて、最初にどこで止まるのか。そして学校が使う側になったとき、何を決めることになるのか。この2つです。

生徒が最初につまずくのは、プロンプトです

指導していて、いちばん多いのがこれです。AIを開いて、入力欄を前にして、手が止まる。何をどう書けばいいのか分からない。

だから学校がAIを教えるとなったとき、まず思いつくのは「プロンプトの書き方」を教えることでしょう。良い聞き方のコツ、指示の型、テンプレート。実際、そういう教材はすでにたくさんあります。

ただ、そこを教えても、あまり解決しません。

書き方の問題ではないからです

手が止まっている生徒に「何を知りたいの」と聞くと、たいてい答えが出てきません。テーマは決まっていない。何が気になっているのかも、まだ言葉になっていない。

つまり、プロンプトが書けないのではなく、書くべき中身がまだ無いのです。

問いが決まっていない場合と決まっている場合で、AIから返ってくるものが違うことを示した図
図1 差はプロンプトの上手さではなく、問いが決まっているかどうか

「探究のテーマを考えて」と入力すれば、AIはもっともらしい一般論を返します。生徒はそれを読んで、ぴんと来ないまま、また別の聞き方を試す。この往復が延々と続きます。プロンプトを磨いても、出発点が曖昧なままだからです。

一方、「部活の朝練は本当に効果があるのか」まで絞れていれば、聞くことは自然に決まります。検証する方法を3つ挙げてほしい、先行研究がありそうな分野を教えてほしい。AIは具体的に返してきます。

AIに何を聞けばいいか分からないときは、まだ問いが立っていないということです。

私たちは研究支援者向けの講義で「プロンプトを磨くな、経路を選べ」という言い方をしています。同じことが、高校生の探究にも当てはまります。上手な聞き方より前に、何を知りたいのかが決まっているかどうか。そこが決まれば、聞き方は後からついてきます。

ここは、むしろ教える側にとって好都合です

問いが曖昧なままの生徒は、これまで最後まで気づかれないことがありました。指導教員が読むのはレポートができてからで、そのときにはもう書き直せません。

AIは、その場で返してきます。もっともらしいけれど自分の関心とずれた答えが返ってきた瞬間、生徒は「これじゃない」と気づく。何がずれているのかを言葉にしようとすると、そこが自分の問いに近づきます。

AIを使わせると考えなくなる、という心配はよく聞きます。ただ実際に横で見ていると、問いの曖昧さが早い段階で表に出てくる分、指導の入口はむしろ増えています。使わせるかどうかより、使ったあとの「これじゃない」を拾えるかどうかのほうが大きい。

学校が使う側になると、決めることが出てきます

ここからは制度の話です。授業でAIを使うとなれば、学校としての取り決めが要ります。私たちは児童向けのアプリを運用していて、未成年にAIを提供する際の要件を実務として整理してきました。そこで実際に突き当たった項目を挙げます。

決めること実務で問題になる点
年齢と利用規約多くのAIサービスは利用に年齢の下限があり、保護者の同意を前提としている。教育向けの提供形態があるかで扱いが変わる
保護者への説明何を使い、何のために使い、入力した内容がどう扱われるか。使い始める前に伝える必要がある
入力してよい情報の線引き氏名や成績、家庭の事情は入れない。ここを最初に決めておかないと、現場の判断に委ねられてしまう
出力を確かめる手順AIはもっともらしく間違える。出典に当たる作業を授業の中に組み込むかどうか
使ったことの書き方どこでAIを使ったのかを、提出物にどう書かせるか

最後の項目が、いちばん割れます

AIを使ってよいのか、使ったら書くのか、書くならどう書くのか。学校によっても、大学の入試によっても、扱いがそろっていません。生徒からすると、去年の先輩と違うことを言われる。教員からすると、何を基準に指導すればよいか分からない。研究の世界では、生成AIをどう記載するかの作法が学会や出版社ごとに整備されてきましたが、学校教育ではこれからです。

おわりに

案が示された段階なので、内容はこれから変わります。ただ、AIを使う前提で学校教育が組み直されていく方向は、もう動かないでしょう。

そのとき最初に用意されるのは、おそらくプロンプトの教材です。それ自体は悪くありません。ただ、生徒が本当に止まっているのはその手前で、そこを飛ばすと、上手に聞けるけれど何を聞きたいのか分からない、という状態が残ります。

問いを立てるところから教える。結局、探究がずっとやってきたことと同じです。AIが来たから新しく何かが必要になったというより、これまで曖昧なままにできていた部分が、はっきり見えるようになったのだと思います。

※ 学習指導要領に関する記述は、2026年8月31日時点で報じられている審議まとめ案に基づくものです。答申・告示を経て内容が変わる可能性があります。最新の情報は文部科学省の公表資料でご確認ください。

校内でAIの扱いを決めることになったら

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