お知らせ:倫理指針が2026年12月1日から改正適用されます
「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の一部改正が、2026年8月27日付の官報で告示されました。適用は同年12月1日からです。押さえておくべき点は3つあります。
① すでに実施中の研究には経過措置があります。個人情報保護関連法令等が守られている限り、従前の例によることができます。12月1日に慌てて作り直す必要はありません。
② 「適切な同意」という枠組みがなくなりました。インフォームド・コンセントに一本化されます。
③ 手続の分け方が組み替わりました。取得の経路ではなく、侵襲・介入の有無と試料を用いるかどうかで分かれます。
指針本文・新旧対照表・施行通知は、厚生労働省「研究に関する指針について」に掲載されています。なお、実務で参照するガイダンスは本記事の確認時点(2026年8月30日)では令和6年4月1日版のままです。
改正点の詳細はこちらの記事で扱っています。
研究計画はできた。データも取れそうだ。けれども倫理審査をどこに出せばいいのか分からない。所属している組織に倫理審査委員会がないからです。この相談は、思っているよりずっと多く寄せられます。
先に決めるのは「これは研究か」です
どこに出すかを考える前に、決めておくべきことがあります。その活動が指針でいう「研究」に当たるかどうかです。
指針のガイダンスは、この判断について、一義的には活動を実施する法人・行政機関・個人事業主の責任で行うものとしています。そのうえで、判断が難しい場合は倫理審査委員会の意見を聴くことを勧めています。つまり、自分で決めてよいが、迷ったら委員会に聞け、という構造です。
逆に、専ら教育目的で行われる実習など、学術的に既知の事象を扱い、得られたデータが教育目的以外に使われない場合は「研究」に当たらないとされています。
実務でいちばん多いつまずきは、ここを曖昧にしたまま進めてしまうことです。院内の取り組みを実践報告のつもりで始めたが、成果が出たので学会に出したくなった。そこで初めて審査の有無を問われる。この順番になると、もう戻れません。
審査は、あとから遡って通すことができません。判断に迷う時点で、始める前に相談しておくのが唯一の対処です。
所属先に委員会がないとき、どこに出すか
| 選択肢 | 向いている場合 | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 共同研究者の所属機関 | 大学や病院の研究者と組んでいる | その機関の規程で、外部者を含む研究をどう扱うか |
| 学会の倫理審査委員会 | 投稿先の学会に所属している | 会員資格の要否。所属先の書き方をどう認めるか |
| 在籍する大学院 | 院生として研究している | 修了後の扱い。研究期間が在籍期間を超えないか |
| 第三者・民間の委員会 | 上記のいずれも使えない | 費用と審査期間。分野への対応可否 |
どれを選ぶにしても、必ず先に問い合わせてください。委員会が外部からの申請を受けるかどうかは、委員会ごとに違います。規程に書いていないだけで、実際には受けている場合もあります。
探す手がかりとして、厚生労働省の倫理審査委員会報告システムがあります。指針に基づいて登録された委員会の情報が公開されており、近隣にどんな委員会があるかを把握できます。
「研究機関の長の許可」という、もうひとつの関門
見落とされがちですが、指針が求めているのは委員会の承認だけではありません。研究者は、倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長の許可を受けた計画に従って研究を行うことになっています。
ここで小さな組織や個人事業では、妙なことが起きます。自分が研究機関の長を兼ねることになるからです。形式上は手続きが成立しますが、実質は自分で自分を許可している状態になります。
だからこそ、外部の委員会に通す意味があります。指針は委員会の構成に、医学・医療の専門家、倫理学や法律学を含む人文・社会科学の有識者、そして一般の立場から意見を述べられる者を求めており、さらに設置者の所属機関に所属しない委員が複数含まれることを条件にしています。外の目を制度として入れる仕組みです。
申請前にそろえておくもの
委員会が決まってから慌てないよう、先に手をつけておくと楽なものを挙げます。
- 研究計画書。様式は委員会ごとに違うので、決まってから清書する
- 説明文書と同意書。または情報公開文書(いわゆるオプトアウト)
- 個人情報をどう扱うか。誰がどこに保管し、いつ廃棄するか
- 研究倫理教育の修了証。これは受講に時間がかかるため、いちばん先に取る
侵襲や介入があるかどうかで、必要な手続きの重さは変わります。質問紙調査だから軽い、既存データだから不要、とは限りません。既存の情報だけを使う研究でも、審査の対象になることがあります。
よくある誤解
匿名化すれば審査は要らない、というものです。個人が特定できなければ個人情報保護法上の扱いは変わりますが、それは指針上の審査が不要になることと同じではありません。どちらの話をしているのかを分けて考える必要があります。
おわりに
倫理審査は、研究を止めるための関門ではありません。研究対象になる人の側から見れば、その計画が外の目を通ったという保証です。そして研究者の側から見れば、あとで問われたときに立てる根拠になります。
所属先に委員会がないというだけで研究をあきらめる方がいます。制度は、その状況を想定していないわけではありません。使える道はあります。始める前に、どこに出すかだけ決めておいてください。
※ 本記事の内容は2026年8月30日時点の確認によるものです。倫理指針は2026年12月1日から改正後のものが適用されます。手続の詳細は必ず最新の指針本文と、提出先の委員会の規程で確認してください。
※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の研究計画に対する法的助言ではありません。
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