変えないことも、ひとつの選択です――指導教員を変えられるか

大学院・研究指導

先に、相談先だけ書いておきます

変更の可否と手続きを最初に知っているのは、多くの場合専攻の教務担当です。事務手続きの問い合わせとして聞けます。話しづらい場合は学生相談室から入っても構いません。学内で相談しづらい事情があるなら、学外の窓口もあります。

指導教員を変えたい。そう考えたことがあるなら、まず知っておいてほしいことがあります。制度としては、多くの大学で変更は可能です。難しいのは手続きではなく、その前後にあります。

この記事では、制度上どうなっているか、変える前に確かめること、そして変える場合と変えない場合のコストを整理します。

制度としては、たいてい可能です

大学院の学則や研究科の内規に、研究指導教員の変更に関する定めを置いている大学は多くあります。名称は「指導教員の変更」「研究指導教員の変更願」など、大学によって違います。

手続きの流れも、おおむね共通しています。変更を希望する旨を届け出て、受け入れ先の教員の承諾を得て、研究科の会議で承認される。

ただし、内容は大学ごとに相当違います。申請できる時期が年度当初に限られている場合、変更の理由書を求められる場合、元の指導教員の同意が必要とされる場合。ここは必ず、所属する研究科の規程を自分で確認してください。この記事の記述より、あなたの大学の規程が優先します。

規程の探し方

大学のウェブサイトで「大学院学則」「研究科規程」「内規」を探す、あるいは入学時に配布された履修の手引きを見ると出てきます。見つからなければ、教務担当に「指導教員の変更について、規程を教えてください」と聞けば済みます。この問い合わせ自体は、事務的な質問であって、何かを申し立てるものではありません。

難しいのは、手続きの前にあります

変更が進まない理由は、たいてい制度ではなく、次の3つです。

受け入れ先が見つからない

変更には、受け入れる側の教員が要ります。そして教員は、他の教員が指導している学生を引き受けることに慎重になります。同僚との関係があるからです。

だから、順序が重要になります。変更を切り出す前に、受け入れ先の見通しを持っておく。これが最も効きます。

見通しの作り方は、正式な依頼である必要はありません。研究の相談として話しに行く。副指導教員がいるなら、そこが最も自然です。授業を担当している教員、学会で話したことのある教員でも構いません。関係を作っておくと、いざというときの選択肢になります。

研究テーマの継続性

指導教員が変われば、扱えるテーマも変わります。設備、データ、方法論、その教員の専門。いまの研究をそのまま持っていけるとは限りません。

ここは、変更を考えるうえで最も現実的な制約です。テーマを変えることになれば、それまでの時間の一部は戻りません。

時期

年度の途中では動かしにくい大学が多く、修了の年度に入ってからでは間に合わないこともあります。

逆に言えば、早いほど選択肢が多い。迷っている段階で規程だけ確認しておくのは、それだけで価値があります。

どちらにも、費用がかかります

指導教員を変えた場合と変えなかった場合のコストを並べた図
図1 比べたうえで選ぶ

変更を考えるとき、多くの人は「変える側のコスト」だけを数えます。テーマが変わるかもしれない、時間が遅れる、周りに説明しなければならない、元の指導教員との関係が悪くなる。

ただ、変えない側にもコストがあります。指導が受けられないまま年限が来る。研究が止まったまま時間が過ぎる。毎日の消耗が続く。

「変えない」は現状維持ではありません。時間を失うほうを選ぶ、という選択です。

どちらを選んでも構いません。ただ、比べたうえで選んでください。片方だけを数えていると、たいてい「変えない」に落ち着きます。それは判断ではなく、先送りです。

切り出し方

元の指導教員に、どう伝えるか。ここで止まる人が多いところです。

結論から言うと、最初に伝える相手は、元の指導教員でなくて構いません。多くの大学の規程では、まず教務担当や専攻長に相談し、そこから手続きが進みます。本人に直接切り出すのは、その後です。

そして、伝えるときの理由づけは、関係の問題としてではなく、研究の方向として説明するほうが進みます。

関係の話にすると、対立になります 「先生の指導方針が合わないので、変更したいです」
研究の話にすると、手続きになります 「研究の方向が◯◯に寄ってきており、その領域は△△先生のご専門と重なります。指導体制についてご相談させていただけますか」

これは、本当の理由を隠すということではありません。相手を責めない形で伝える、というだけです。責める形にすると、相手も防御に回り、話が進まなくなります。

ハラスメントが理由の場合

研究の方向として説明することが難しい、あるいはそう説明したくない、という場合もあります。そのときは、指導教員の変更としてではなく、ハラスメント相談窓口への相談として持ち込む道があります。窓口の判断で、指導体制の変更が措置として取られることがあります。判断がつかない段階でも、相談は可能です。

変える前に、確かめておくこと

  • 所属研究科の規程に、変更の定めがあるか。申請時期の制限はあるか
  • 元の指導教員の同意が必要とされているか
  • 受け入れ先の見通しがあるか。なければ、まず関係を作れる相手がいるか
  • いまの研究テーマを継続できるか、変更が必要か
  • 修了までの年限に対して、時間的な余裕はどれくらいあるか
  • これまでの経緯を、日付とともに説明できる状態か

最後の項目は、記録の話と同じです。変更の理由を聞かれたとき、「うまくいっていません」だけでは伝わりません。いつ何があったかを並べられると、聞いた側が事実として扱えます。

おわりに

指導教員を変えることは、失敗ではありません。研究の内容も、進め方も、人との相性も、入学時には分からないことばかりです。合わないと分かった時点で動くのは、むしろ合理的な判断です。

ただ、変えることが常に正解でもありません。テーマを継続できないなら、残るほうが早い場合もある。ここは、比べたうえで自分で決めることです。

決められないときは、決めるための材料が足りていません。規程を読む、受け入れ先の見通しを探る、経緯を書き出す。この3つで、たいてい判断できるところまで来ます。

※ 指導教員の変更に関する制度は、大学・研究科によって大きく異なります。本記事は一般的な情報提供であり、実際の手続きは所属機関の規程に従ってください。
※ 心身の不調が続いている場合は、研究の状況とは別に、学生相談室や保健管理センター、医療機関にご相談ください。

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