先に、相談先だけ書いておきます
いま困っているなら、記事を全部読まなくて構いません。多くの大学には学生相談室とハラスメント相談窓口があります。研究の相談でなくても使えますし、「どうしたらいいか分からない」という状態のまま話しに行って構いません。所在は、大学のウェブサイトで「学生相談」「ハラスメント 相談」と探せば出てきます。
学内では話しづらいという場合、学外の相談先もあります。この記事の最後にも書いています。
メールを送った。返事が来ない。1週間経った。催促していいものか迷って、また数日過ぎる。自分の書き方が悪かったのか、しつこいと思われているのか、そもそも読まれているのか。考えているうちに、次のメールが送れなくなる。
この状態が続くと、研究が止まります。そして、止まっていることをまた自分の責任だと感じる。悪循環です。
この記事では、待つ期間の目安、送り方の見直し、記録の残し方、そして次に誰へ相談するかを、手順として書きます。
まず、待つ期間の目安を決める
目安がないと、いつまでも待てますし、いつまでも不安でいられます。だから先に決めてください。
平日で1週間。これを一区切りにするのが現実的です。教員は会議と授業と締切に追われていて、即答が難しい日は多い。ただ、1週間あれば一言返す時間はあります。
例外はあります。学会の開催期間、入試や試験の期間、長期休暇、年度末と年度初め。相手が学部長や学科長を兼ねている場合も、動きが遅くなります。こういう時期が分かっているなら、そこは差し引いてください。
目安を持つことは、相手を責めるためではなく、自分が判断できるようになるためです。
送り方を、一度だけ見直す
返事が来ない理由が、こちらの送り方にある場合もあります。それを一度だけ潰しておくと、次に進みやすくなります。
返信しにくいメールには、共通の特徴があります。要件が複数入っている、何を判断してほしいのか分からない、期限がない、長い。
先日はありがとうございました。第3章の構成について考えたのですが、先行研究の並べ方をどうするか迷っています。それと、解析の方法についてもご相談したいことがあり、あと学会発表の件も…(以下続く)
第3章の構成を2案作りました。添付をご覧いただき、AとBのどちらで進めるかだけお知らせください。
ご返信いただけない場合は、9/15以降はA案で進め、次回お会いする際に改めてご確認いただく形にいたします。
要件を1つに絞る。件名に期限を入れる。答えを選択肢にする。そして、返事がない場合にどうするかを自分で書いておく。
最後の一文が効きます。相手にとっては「返信しなくても止まらない」ので気が楽になり、こちらにとっては研究を止めずに済む。催促にもならない。
これを1回やって、それでも返事が来ないなら、送り方の問題ではありません。次へ進んでください。
記録を残す
地味ですが、あとで最も効きます。
| 日付 | 手段 | 内容 | 返信 |
|---|---|---|---|
| 7/14 | メール | 第3章の構成2案を送付、A/Bの確認依頼 | なし |
| 7/22 | メール | 同件を再送 | なし |
| 8/3 | 研究室で直接 | 口頭で確認、「後で見ておく」 | その後なし |
これは相手を告発するための材料ではありません。あとで誰かに相談するとき、状況を説明できる唯一のものです。
「連絡が取れなくて困っています」とだけ言っても、聞いた側は動けません。「7月14日から3回連絡し、8月3日に口頭で確認したが、その後1か月返答がない」と言えれば、聞いた側は事実として扱えます。この差は大きい。
メールは残っていても、口頭のやりとりは残りません。日付と内容を、その日のうちに1行書いておいてください。
連絡のやりとり以外も、1行で残す
記録が要るのは、メールの往復だけではありません。ゼミでの発言、廊下での立ち話、態度の変化。あとで誰かに説明するとき、必要になるのはむしろこちらです。
そして、この習慣がいちばん効くのは、まだ何とも判断がつかない段階です。おかしいと感じるが確信は持てない、という時期が続き、いざ相談しようとしたときに何も残っていない。これがよくある形です。
9/5 研究室 解析方法を質問したが「自分で考えて」とのみ。
9/9 メール送信(第4章)。返信なし。
書くのは、日付、場所、誰がいたか、何と言われたか。この4つだけです。
逆に、書かなくていいものがあります。そのときの気持ち、相手の意図の推測、自分がどう悪かったかの反省。こうした解釈を書き込むと、あとで読み返したときに事実と混ざります。相談を受ける側が必要とするのは、起きたことのほうです。
どこに残すかを、先に決めてください
大学から付与されたメールアドレスやクラウドではなく、自分個人の環境に置いてください。休学や退学の手続きが進むと、大学のアカウントは止まります。そのとき記録ごと失います。スマートフォンのメモアプリでも、紙のノートでも構いません。続けられる形がいちばんです。
研究を止めない
指導がなくても進められる部分は、必ずあります。文献を読む。検索式を組む。倫理審査の書類を準備する。解析の練習をする。序論を書いてみる。
これは「待っている間にできることをやろう」という気休めではありません。相談したときに「指導がないので何もしていません」という状態だと、こちらの側が問われます。逆に、進められる範囲で進めていれば、止まっている原因がどこにあるかがはっきりします。
それに、手を動かしているほうが、待つ時間の苦しさが少しましになります。
次に、誰へ相談するか
副指導教員がいるなら、そこが最初です。研究の進め方の相談という形で持ちかけられます。ただし、指導教員に伝わる前提で話してください。教員どうしは話します。
専攻の教務担当は、事務手続きとして扱ってくれます。感情の入らない場所なので、話しやすいことがあります。記録も残ります。
研究科長や専攻長は、指導体制そのものを動かせる立場です。ここまで来ると話が大きくなりますが、それが必要な段階もあります。
学生相談室は、研究の話でなくても使えます。「指導教員と連絡が取れなくて、どうしたらいいか分からない」と言うだけで構いません。カウンセラーは学内の制度も知っていて、どこへ持っていけばよいかを一緒に考えてくれます。
ハラスメント相談窓口は、どの大学にも置かれています。「これがハラスメントかどうか分からないのですが」という入り方で構いません。判断するのは窓口の側です。
学外の窓口は、学内で話しづらいときの選択肢です。指導教員が有力者である、相談したことが伝わりそうだ、という状況では、学内の窓口が使いにくいことがあります。
順番どおりに進む必要はありません
副指導教員がいない、研究科長が指導教員と近い、といった事情はよくあります。話しやすいところから、あるいは安全なところから行って構いません。学生相談室は、どの段階からでも使えます。
これはハラスメントなのか
この問いを、自分で決める必要はありません。
指導の放棄が不適切な指導として扱われた例は、実際にあります。ただし、その判断をするのは第三者委員会や相談窓口であって、当事者ではない。自分で判定しようとすると、「まだそこまでではない」「自分が我慢すればいい」という方向に流れやすくなります。
必要なのは、判定ではなく相談です。窓口に持ち込んだ結果、「これは指導の範囲です」と言われることもあるでしょう。それはそれで、判断の材料になります。
相談することと、告発することは別です。相談は、状況を人に話して整理してもらうことです。
最後に
返事が来ないことの理由は、多くの場合、こちら側にはありません。相手が多忙である、体調を崩している、指導の方針が決まらない、そもそも指導に手が回っていない。どれも起こります。
それでも、返事を待っている側は自分を責めます。書き方が悪かったのではないか、頼りすぎたのではないか、と。この記事で伝えたかったのは、待ち続けること自体は対処ではない、ということです。
目安を決める。1回だけ送り方を変える。記録を残す。進められる部分を進める。そして、誰かに話す。この5つで、少なくとも状況は動きます。
ひとりで抱えている時間が長くなるほど、動きにくくなります。早いほうが楽です。
※ 本記事は一般的な情報提供です。相談窓口の名称や設置状況は大学によって異なります。所属機関のウェブサイトでご確認ください。
※ 心身の不調が続いている場合は、研究の状況とは別に、学生相談室や保健管理センター、医療機関にご相談ください。
学内では話しづらい、というとき
指導が受けられないまま研究が止まっているとき、外部の伴走者という選択肢もあります。博士(医学)の代表が直接お受けしています。
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